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オリジナルの連載小説や小話、詩などを書いています。コメントくださると嬉しいです!! アンケート作りました。宜しくお願いします!!!
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――チュンチュン、チチチッ




ふっと耳に入ってきた鳥の声に目が覚めた。


一番初めに目に入ったのは、いつもの無機質な灰色の空間ではなく、暫く見ていなかった新緑。
久しぶりの景色に無意識のうちに手を伸ばしていた。
その時、視界のはしに写った赤に思わず身体を起こし、自分の状態を確かめる。
元々、ボロボロの服はさらにボロボロになり、手首と足首には引きちぎったであろう枷と鎖、そして手は固まった血で赤黒く染まっていた。


「っ!ゲホッガハッ!」



瞬間、ひどい吐き気に襲われた。だが、吐くものの入っていない胃はしょうがなく胃液を送り出す。咽の奥がヒリヒリと痛い。


こんな咽裂けてしまえばいいっ


そう思い無我夢中に咽を掻き毟ってみるが、自害しないようにとキレイに丸く切りそろえられた爪では血が滲むだけだった。
掻き毟ったときに爪から剥がれ落ちた血の塊が目に入ると今度は後悔の念が込み上げてきた、頭によぎるのはこれがボブの血ではないかという最悪の考え。
その手を睨みつけながら、せめて「アイツ」の方の手なら…、そんな考えが頭を一瞬よぎるが振り払う。「アイツ」である部分が少しでも外に出れば自我を保てないことぐらいわかりきっている。
ここまで考えれば嫌でも理解する。


「俺は死ねないのか……。」


思わず声に出してしまうとやけに響いたように聞こえた声にさらに絶望した。
「アイツ」になるわけではないが、身体が耐容するために細胞の構造が数段あがっている肉体にそこらへんにある普通の刃物が貫けるとは思えない。
そうなると、必然的に死ぬことができないのがわかる。
スッと力を抜きドサリと草に体を預けた。
生い茂った葉の隙間から見える空を見ながら思う。


このまま朽ちていくのもいいかもしれない。


思った瞬間に浅はかな考えに嘲笑した。
「アイツ」が体の中に居るだけでそれはできない。
この体が朽ちようとすればその前に生存本能の強い「アイツ」が出てきてまた人を襲うだろう。
そうなったらまたあの灰色の世界に逆戻りだ。


結局、どうすればいいんだろうか……。

俺はそこまで考えると眼を閉じ、明日からどうするか考えながら、またこの血がボブの血でないことを祈りながら森の中で眠った。


―――――――――――――――――――――――――――――――
やっほー!!久々の更新だぜぃww
連載関係もうすぐ1年ぶりになるところだったww
ギリギリ11ヶ月ぶりです!
今度の話である意味この連載のヒロイン(?)がでるはず。
うん、頑張ろう。
あ、連載関係(特に『空に恋して』)結構書き直すかも。
今の文体と全然違う感じになってきてしまったもんで。
書き直しつつ連載も書いていければなぁ……あは☆
以上、疲れでテンションがおかしい管理人でした!
あ、日記のブログできたら変えます。
メアド変えたらログインできなくなったww(放置のし過ぎです)

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「良い仕事がある。」


そう友人に言われたのが始まりだった……。


金に困ってた俺は友人の後を疑いもなくついて行った。
だが、目的地について早々誰かに殴られ意識を失って気がつけば全てが終わって
いた。
そう、全てが終わっていた。
俺は、人体実験をされ狼の組織を入れられていた。
だが、他の合成獣(キメラ)とは違い耳も人間のものの形のままで尻尾も生えておらず、毛の濃さも変わらなかった。
そのままでいれば人間だと疑わない容姿。
いや人間にしか見えない容姿。
殺戮衝動が芽生えるようになったとか、爪が異様に尖っているとかもなく、人間
のまま。
研究所はそんな俺を失敗作として丸裸の状態で


捨 て た 。



そう、捨てた



『捨てられた。』そう理解した瞬間、俺の意識は途切れた……。



気が付けば手には朱が付いており、俺を捨てに行った研究員達はただの肉塊とか
していた。
成功していたのだ。
アイツらの実験は、真の意味で成功したのだ。
『人間の容姿のまま動物の本能で殺戮を繰り返すモノ』
一回だけみたことのあるアイツらの研究書。
そこにはハッキリとそう書かれていた。



つまり、



俺は



実験の



『成功物。』



それがバレれば連れ戻されるのは目に見えた。
もう、あそこには戻りたくない。いや、戻らない。
そう決意し、肉塊とかした研究員だったものの服を身に纏い俺は研究所の敷地か
ら抜け出した……。

研究所を抜け出したのは良いが、直ぐに、埋め込まれた狼の遺伝子の反動で、我
を忘れ人を殺し囚人として投獄された。
それから10年の月日が経った。
正直、よく此所まで保ったと思う。
この10年、外界からは隔離され、情報すら貰えず、手や足の枷が外れることはな
かった。
さらに飯はカビの生えたパンと味のしないスープ。
人の良い看守のお蔭で飯にありつけないことはなかったが、もうこんな風に生き
るのは嫌だった。
だから、
だから
抜け出すと決めた。
抜け出すと決めるまでのこの10年間良い事といえば人の良い「ボブ」が看守だっ
た事ぐらいだ。
ボブは外の情報を教えてくれる、唯一の情報源でもあった。と、言ってもほぼ自
分の娘の話ばかりだったが。
それでも、外で何が起きているのかはいくつか教えてもらった。
俺の他にも獣人が捕まっただとか、違法研究をしていた所が摘発されたとか。他
愛もない話だったが、色々なことを話してくれた。
だがそれも今日で終わり。
これだけは、本当はやりたくなかった。
この10年間、わけのわからない薬を打たれ「アイツ」に変わることは無かったが、娘の誕生日で浮かれているボブは規定の時間に薬を打ち忘れた。
大分後に薬を打たれたが、もう遅いらしい。
10年間ずっとだしてもらえなかったからだろうか、抵抗が激しく、中にいるアイ
ツを押さえられそうにない。



だから、


今日、



脱獄する。



幸い、ボブによれば今日は一日曇りらしい。
姿を見られることは少ないはずだ。
ならば、アイツになった時にでもフェンスを破って逃げ出してくるれば万々歳だ

――俺は、そこまで考えると意識を無くした。



―熱い…



周りは火の海状態にも関わらず、漠然とそんなことを思う。



―俺、死ぬんだろうな。



自分の生死に関わることなのに

煙を吸い過ぎたせいか、

頭が働かないせいか、

他人事のように思えてしまう。




こんな状態になると面白いもので、走馬燈のように思い出が過ぎて行く。
それに懐かしみを感じ、俺は目を閉じて、それに浸った。
「ハッ、あの頃に比べたら俺も丸くなったもんだよな。」










   ―少し昔話をしようか―







―ログルシア―



月が完全に昇ってから少し経った頃

ある一箇所が急に騒々しくなった。

サイレンが鳴り、ライトが辺りを照らし、人が叫ぶ。

「おい!囚人が逃げたぞ!捜せ!!」

一人の迷彩服の男が叫ぶ。

「チッ、よりにもよって半獣人かよ。奴は俺らなんかじゃ相手にならん!麻酔銃を使え!!」

そう男が指示した瞬間


ギャァァァァァァアァァァ――!!


一つの叫び声が響いた。

一瞬、水を打ったように静かになり、直ぐにあちこちで指示が飛ぶ。

「いたぞ!」
「眠らせろ!」
「外すなよ!!」


辺りは一際騒々しくなる。
叫び声の方へ人が走って行く。


カサリ。


その時、近場の草むらで何かが蠢いた。

一人の男がそれに気がつき
「お…。」
他の男に知らせようとするも頭が薙がれ「人間だった物」き変わる。
胴と頭が離れ鮮血が飛ぶ。

その男の隣にいた男は肩から血しぶきが飛び、足下には腕が落ちていた。



「ッ、ギャァァァァァァアァァァ――!!」

アォ――――ン…


全てが



一瞬の



出来事だった



叫び声が響き、すぐ近くでは獣の遠吠えも響き、月が顔を出した。



月の光で現状が露わになる。地面には「人だった物」が倒れ、腕が落ちているその隣りには肩を押さえ激痛にのた打ち回る男がいて、その正面には、
獣なのか、
人なのか、
判断がつかない
まるで

人と獣を足して二で割ったような



―バ ケ モ ノ ―



それがいた



鎖がついていたであろう手足の枷がジャラリと独特の金属音が鳴る。
引千切ったのだろう少し鎖がついている。



それは、月の方を一瞥すると目を細め、身を翻すと後にあるフェンスを破りまだ明けない暗闇の中に消えて行った…。






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